メイビスのテレキャスタータイプのピックガードを交換してみる

石橋楽器のオリジナルギターブランド、Mavis(メイビス)のテレキャスタータイプです。
所有しているギターの中で唯一のテレキャスモデルなので大事にしている1本。

訳ありジャンクで購入した後、とりあえずの処置として

と、すでに必要最低限かつ必要十分なカスタマイズを施してはあるのですが、今回は見飽きてしまったルックスを一新するためにピックガードを交換してみようと思います。

今回はテレキャスですが、ストラトキャスターでも作業内容は同じです。ただしストラトはピックアップの数が多く、ポットやスイッチがピックガードに固定されているので作業工程が大幅に増えてしまいます。

ピックガードを外す準備

弦を張ったままだと作業しにくいので弦は外した方がいいです。必要に応じてネックをボディから外す必要も出てくるので、弦を張り替えたばかりで勿体ない、という場合は弦は外さずネックを外すことで対応できます。

ただ、ネックを外すという行為は場合によってはギターの微妙なバランスを崩してしまうことにもなりかねないので、そこはギターの状態や自分のスキルとの相談になります。

必要な工具や道具などは作業工程ごとに紹介していきます。

ピックガードを止めているビスを外す

今回は8点止めのピックガードを外すので画像の赤丸で囲った8本のネジ(ビス)をプラスドライバーで外します。

ストラトタイプの場合は11点止めが一般的でヴィンテージタイプで9点止めも存在します。(8点止めもあるらしい)

ビスを外せばピックガードが外れるのですが、指板のツバとピックアップの座繰りの兼ね合いによっては指板にピックガードが引っかかってしまいます。
強引に力業で外せる場合もあるのですが、無理をしてピックアップの配線に負荷がかかってしまったりすると元も子もないので、ちょっと無理をしても外れない場合はネックを外す必要が出てきます。
(今回はネックを外さずに外れましたが、新しいピックガードの組み付け時にスンナリいかず結局はネックを外すことになりました)

ピックガードからピックアップを外す

うまいことピックガードが外れてもまだピックアップが固定されていますので、これを外していきます。

画像のようにシングルコイルの場合は2本のビスで、ハムバッカー(エスカッション含)は2~4本のビスで止まっているのでこのビスを緩めて外します。
ピックガードとピックアップの間に高さ調整用のスプリングが挟まっている事が多いので無くさないようにご注意を。

このギターのような一般的なテレキャスタイプの場合はピックアップ1個を外すだけですが、一般的なストラトタイプは3つのピックアップと2~3個のポットと1個のスイッチも外す必要があります。

新しいピックガードを当ててみる

ピックアップを外し古いピックガードが撤去できたら、新たに装着したいピックガードを仮当てしてみます。

可能なら仮当てではなくすぐにでも仮組みしたいところなんですが、交換前と後のピックガードでは細部の造りが違うことがよくあります。
なので取りあえずボディの上に乗っけてみて修正する必要のある場所があるか、あるならどの程度の修正をすれば良いのかを洗い出していきます。

今回はネックポケットの指板に隠れる部分、この箇所の幅が狭くて入らないことが判明しました。ここをなんとかしないと仮組みすら出来ません。

外したピックガード(白)と新たに用意したピックガード(黒)を重ねてみるとご覧の通り。ネックが収まる部分の幅が異なります。

一見すると右側の少しだけ出っ張っている箇所、そこだけ修正すれば上手く嵌まりそうに思えるのですが、全体的なバランスを見て考慮すると左右均等に拡げていかないとピックガードがギターの中心に収まらなくなってしまうようです。

サイズの合わない部分を修正する

元々付いていたピックガードをあてがって削る必要がある部分を罫描いてみました。この線が付いた部分を削っていきます。

恐らくですが、「ピックガードを変えてみよう!」と思い立って調べてはみたけど調べただけで実行しなかった、という方の多くはこの辺の段階を読んで諦めるのではないかと想像しています。

分厚いプラスチックの板をこの直線に沿って削る。
確かに面倒くさそうな作業ではあるのですが、キチンと道具を揃えて望めばそれほど難しい作業ではありません。

直線部分はハサミで切れます。
もちろん100均のハサミじゃ無理ですが、ちょっとだけまともなハサミを用意すればピックガードを直線に切るくらいは朝飯前です。

私が使っているのはアルスのハサミ。
画像に写っているものは30年近く使っていますが切れ味は全く衰えません。
別のメーカーでも構いませんので日本製の確かな物が1本あると色々と捗ります。紙や布はもちろん、プラスチックから金属まで、家庭内で切る必要のあるものはたいてい切れますし。

細かい部分はカッターを使います。これも100均ではなくちょっとだけマシな物。
画像の物はオルファの「たち(裁ち)」。切ることはもちろん、上から力を入れて抑えつけることで「裁つ」「絶つ」といった使い方が出来ます。
細部の樹脂を裁断するならこれが一番。

普通に使っているだけならどちらもかなり長持ちします。いよいよ切れなくなったらアルスのハサミはメーカーが研ぎ直しをしてくれますし、オルファは替え刃が売られていますので交換すれば新品の切れ味に戻ります。

100均の製品と比べればお値段は高いですが、両方買っても2000円でお釣りが来ますし、100均の刃物製品を20個買い換えても切れない物がスパスパ切れます。

長々と話が逸れてスイマセン。
ギター弄りは道具・工具に依存する部分が結構あります。まともな道具を手にすることでいままで諦めていた作業が出来るようになってしまう、なんてことを私もたくさん経験しています。

修正したピックガードを仮組みしてみる

上手いこと修正できたので仮組みしてみます。

赤丸で囲った3カ所をビス留めしてみました。ネック部分は問題なく嵌まりましたし、ブリッジとピックガードの隙間が均一なところを見ると、歪むことなく取り付けできていると判断します。

が、赤丸で囲った以外のビス5本。この5本のビス穴がボディ側のビス穴と一致しません。
この写真の状態だと下側のビス3本とネックのツバ部分だけで止まっている状態です。

正直なところを言えば個人的にはこの状態でも構いません。
このギターを持ってステージに立つ分けでもなく、誰かに見せびらかすような高級ギターでも無く、ただ自宅で弾くだけのギターなのでこのままでもいいんですよ。

ですがせっかくここまで作業してきたので、またブログに作業記録として残しておきたいので、ボディのビス穴を開け直してキッチリと取り付けたいと思います。

ビス穴は合わないと思った方がいい

交換したいピックガードを見つけて「ピックガードを換えたい!」と思ったとします。そこで次に考えるのは「果たしてこれは自分のギターに付くのだろうか?」ということではないでしょうか。

普通に考えればストラトタイプのギターにストラト用のピックガードは取り付けできると考えます。テレキャスタイプにテレキャス用のピックガードも同じです。

ところがピックガードの形状やビス穴の位置なんてものに統一規格はありません。各ギターメーカーやパーツ・アクセサリーを作っているメーカーが好き勝手にデザインしてるわけです。

一部のメーカーではモデル専用品としてアフターパーツを売っていたりしますが、そんなのは本当にごく一部の例。
FENDER ピックガード GRECO WS-STD 専用ピックガード

また同一メーカーの同一モデルであっても製造時期や工場が異なれば穴の位置も微妙に変わります。「ギブソンレスポールで型取りしました」というピックガードでも過去から現在までの全てのレスポールにポン付けできるわけではありません。

なのでAというギターにBというギターのピックガードを載せるとか、CというギターにD社が発売しているピックガードを載せる、なんて場合は往々にしてビス穴の位置が合いません。
ビス穴が合わないどころか形状も微妙に異なるので、今回のように削ったり整えたりという作業も必要になることが多いです。

現物合わせ、という言葉があります。

現物合わせ
部品を組み付ける場合、一方に他方を合わせること。図面寸法どおりにできていない場合に、片方の部品だけを修正して相手に合わせる場合や、双方の部品が定められた基準寸法でできているにもかかわらず、合い具合の目標品質が達成できない場合がある。このようなときに、どちらかの部品精度を固定して、合い具合の目標品質ができるように他方の部品の基準を修正することも、現物合わせという。

Weblio辞書

ピックガードの場合もまさしくこれで、実際にあてがってみてピックガード側・ボディ側それぞれを修正しながら合わせていきます。

希にですがピッタリ合うことも無くはないです。ですがそれも偶然にピッタリ合ったということではなく、事前のリサーチで「○○は△△にポン付けOKだった」なんていう情報を掴んだ上で、事前にある程度の確信を持って購入し結果として「ピッタリ合った」という事例です。

ですので、選んだピックガードが自分のギターにピッタリ合うかどうか、合わないとしたらどれくらいの修正が必要か、なんてことは実際に試してみないと誰にも分からないものなんです。

お店でピックガードを買ってみたものの自分のギターに合わなかった。だからといってそれが正当な返品理由になるかというと大くの場合はなりません。
かといってお店の人に「○○というギターに合いますか?」「合う物をください」と言っても期待するような答えは返ってこないと思います。
合わなくて当然、自分で合うようにして使うものなんです。

とはいえ、ネットで検索したら自分と同じギターを持っている人がピックガード交換したという記事やレビューが見つかった!ということも無くはないので、取りあえず検索してみるのも忘れずに。

ボディ側のビス穴を埋めて新しく開け直す

ビス穴埋め

まずは古いピックガードの位置に合わせて空いていたビス穴を埋めます。

新旧の穴の位置が大きく異なる場合は埋めなくても大丈夫だったりしますが、今回は微妙に隣接していて新たに開ける穴と被る部分もあるので一度埋めて塞いでしまいます。

今回使用する接着剤はおなじみのタイトボンドです。「ギターを弄るなら持っておくべき」なんて言われることも多いですが、私の場合だと木工まで弄る機会ってそう多くないので、ビス穴を埋めるくらいにしか使いません。
とはいえ、他のボンドでは代用が利かないのでやはり「持っておくべき」アイテムなのかもしれません。

適当な容器にタイトボンドを必要量だけ出します。今回はビス穴を5カ所埋めるだけなので本当に少量です。

このままでも使えるのですが、今回は水で薄めて使います。薄める理由は後述します。

タイトボンドと水を2:1くらいの割合で薄めました。トロッとしていたのがシャバシャバになるくらいの薄め方です。

埋めたいビス穴に爪楊枝の先(尖った方)を使ってタイトボンドを流し込みます。
タイトボンドを薄めた理由はこの流し込む作業がしやすいからです。原液の状態だと入り口に付着するだけで奥まで入っていかないんです。
また水で薄めることで木材に浸透しやすくなり接着力や強度が増します。

爪楊枝の太い方(根元の方)にタイトボンドを付けてグリグリと押し込みます。

穴埋めに使う木材はビス穴の径によって変えたりしますが、ピックガードを取り付けているビスの径でしたら一般的な爪楊枝がピッタリです。
キツい場合は奥まで無理矢理にでも押し込んでください。

タイトボンドは水溶性なのではみ出したボンドは水で濡らしたティッシュや雑巾で拭けば簡単に落ちます(乾く前に拭いてください)

爪楊枝の余計な部分は切り落としてしまいます。
太い埋木の場合は薄刃鋸を使ったりもしますが、爪楊枝くらいの太さなら一般的なカッターナイフでも切断できます。

埋めたいビス穴を全て塞いだらボンドが乾くまで待ちます。
タイトボンドの硬化時間が24時間らしいのでそれくらい待ちましょう。

ビス穴開け

24時間経過したら新しく穴を開けていきます。

交換するピックガードをボディに当てます。ズレてるとダメなのでピッタリ正確に。
今回は下側3本のネジ穴が古いピックガードと一致しているので、この3本を止めることでピッタリ正確な位置に当てることができます。

丁寧な作業をする場合にはビス穴を空ける場所の印を付けた後にピックガードを一度外してから穴を開けるのですが、今回は当てがったピックガードはそのままにドリル刃(ドリルビット)で穴を開けるといった大雑把な作業をしてしまいます。

アジア製ミリ規格の場合ピックガードを止めているビスは3mm径のものが使われます。なのでドリル刃の径は2.5mmを使います。2.5mmなら太すぎてピックガードを削ってしまうこともありませんし、細すぎて中心がズレてしまうといったミスも起こりにくいです。

電動ドリルは1台持っているとギター弄りに便利です。逆回転可能でドライバーとして使えるドリルドライバーなら更に便利。
ドリル刃は100均でも購入できるもので十分です、職人さんが使うような高い物は要りません。

埋めた穴と新たに開けた穴が隣接しています。これくらい接近していると前の穴を埋めずに開け直すと大きな穴がガバッと空いてしまうことになりかねません。

逆に言えば、遠く離れた場所に開け直すのであれば古い穴は埋めずにそのままでも大丈夫です。(ピックガードに隠れてしまう場所であれば)

すべての穴を開け直したらネジ止めして完成です。

白から黒パーロイドに変えたことで締まった印象になりました。でも白の方が良かったような気もしています。そのうち白パーロイドに変えているかもしれません。

まとめ

必要な道具が揃っていれば難しい作業では無いのですが、ハサミなどの刃物はともかく、電動ドリルはちょっとお値段が嵩むので簡単に購入には踏み切れませんよね。

ドリルによる下穴を開けずに錐(キリ)などで目安を付けて木ねじを締め込んでしまうことも出来なくはありません。
出来なくはないのですが、下穴を開けずに締め込むと木材によってはヒビが入ったりしますので、そこはギターとの相談になります。なるべくなら下穴を開けてください。

ギターは木材で出来ているので、止まっているネジを外したり締め直したりするうちに少しずつネジ穴が壊れて緩んできてしまいます。ピックガード以外にもペグを止めているビスやストラップピンのビスなんかが顕著な例です。

そうした場合は一度ネジ穴を木材で埋めて新たに開け直す必要が出てきますので、やはりタイトボンドと電動ドリルはギターを弄っているとどうしても必要になる道具です。

手放します

ここまで作業をしてきて唐突な展開ですが、そのうち手放そうかと思っています。

今回のピックガード交換は「やり残し」と言いますか、購入時に考えていたカスタマイズプランに入っていたものの、他の作業と比べると優先順位が低くてなかなか実現できなかった作業でした。
それを今回やり終えたことでこのギターを手放しても良い理由が出来たように感じています。

元々が安ギターですので使われている木材や加工精度はそれなりですが、私なりに使えるように調整し、音を出すに当たって重要なパーツは交換していますので素の状態よりはだいぶマシになっていると自負しています。

ジャンクとしての購入でしたが、ジャンクの理由は前述したようにナット割れでした。ネックが折れているとかボディが割れているとかではありませんので、ナットを交換してしまえば普通のギターです。

手を加えた分だけ愛着があるので今すぐにとはいきませんが、そのうちいつかフリマサイトに出品しますので縁がありましたらご検討ください。

ただ発送はネックとボディを分離しての梱包になってしまいますので、ある程度ギターを弄れる方でないとお勧めできないのが難点。


このギターで使用しているパーツ類

MONTREUX  Compensated Brass Tele saddle set
MONTREUX Compensated Brass Tele saddle set GRAPHTECH PT-5010-00
GRAPHTECH PT-5010-00 SCUD  HK-05C
SCUD HK-05C ROTOSOUND  R10 ROTO YELLOWS REGULAR
ROTOSOUND R10 ROTO YELLOWS REGULAR
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