中古で購入したアリアプロ2 マグナのペグをオーバーホールしてみます。
現状は動きが渋かったりトルクが一定では無かったりとあまり良い状態とは言えません。そもそもそれほど良い造りのペグでは無さそう。
まずは分解するのですが、分解時の画像を撮影するのを忘れてしまいました。
なので分解し終えたところから唐突に始まります。
1つのペグはこんな感じの部品構成から成り立っています。
この中からグリスでベトベトになったパーツを取り出して洗浄します。
上の画像のパーツがグリスで潤滑されているパーツです。
本体のケース内部と、そこに収まるウォームホイール。
ツマミの回転を伝えるウォームギアとワッシャー。
ウォームホイールと軸(ペグシャフト)を固定するネジ。
この古いグリスを落としていくのですが、手がべたべたになるのを覚悟してください。ビニール手袋があるといいかもしれません。細かい部品を扱うことを考えると医療用で使われる薄手のラテックス手袋があれば最高です。
私は男の子なので潔く素手でいきます。そして毎回後悔します。
手袋以外には機械整備で使われるペーパーウエスがあるといいです。雑巾とかだと細部まで行き届きませんし使い捨てが出来ません。ティッシュペーパーなどの柔らかい紙だと破れやすいですし紙の繊維が残ってしまいます。
拭き取る以外の方法では水(お湯)洗いでもOKです。油汚れに強い中性洗剤(キッチン用)を使ってもいいですし、クルマやバイク整備に使うパーツクリーナーも使えます。パーツクリーナーはカー用品店やホームセンターで数百円で買えると思います。
ですが、パーツクリーナーだけでグリスを落としきれるかというとなかなか難しいです。なので中性洗剤とお水(お湯)で洗った方が安上がりだと思います。
水洗いした場合は水分を拭き取って素早く乾かしてあげてください。濡れたまま放置で乾燥させると錆びが浮いてきますのでご注意を。
ともかく何らかの手段で古くなったグリスを落とします。
ギザギザの付いた丸いパーツがペグの心臓であるウォームホイールというパーツです。ギザギザの数でギア比が決まります。
このペグの場合だとギザギザが14個なので1:14です。シャフト(弦を巻き付ける部分)を1回転させるのにツマミ(ペグボタン)を14回転させる必要があるわけです。
1:14というギア比はまぁこのクラスのギターに付いているペグでは一般的な数値です。
リプレイスメントパーツとしてポピュラーなGOTOH SG381はギア比 1:16 です。1:14と比べるとシャフトを1回転させるのにツマミを2回余計に回す必要があります。イコール、それだけ精密にチューニングが出来るということになります。
GOTOHの高級機種であるGOTOH 510シリーズの中には1:21なんてギア比の物もあったりします。
アップにしてみると歯の一部が減って損傷しているのが分かりますね。歯の造形が揃っていないのはそもそもの造りが荒いのか摩耗によるものなのか。
いずれにせよこれを見ちゃったらテンション落ちるよね。
と愚痴っても仕方がないので、グリスを全部落としたら組み上げていきます。もしもケースやボタンの錆を落としたり磨いたりしたければこのタイミングで行うのがベストかもしれません。組み上がっちゃうと細かいところまで磨けなくなっちゃうからね。
古いグリスを落としたので新しいグリスを添加しなければいけません。今回用意したのは安いリチウムグリス。
ホームセンターに行けばこのサイズで200円くらい。小分けになると400円ぐらいするのでこのサイズで買ってしまうのが一番お得ですが、日常ではあまり使わないので少量入りでもいいと思います。
ホムセンがご近所に無いようでしたらAmazonでも売ってます。
グリスにもモリブデングリスとかシリコングリスとか色々あるんですが、ペグ内部の潤滑に高級なグリスは勿体ないと思って一番安いリチウムグリスを使っています。
じゃぁ組み上げていきます。
まずはウォームギアのシャフトにワッシャーを通します。このワッシャーは代用品の入手が困難なので無くさないように注意です。
中にはワッシャーが無いペグもあるかもしれません。(たぶん)
このワッシャーと軸に薄くグリスを塗っておきます。
ピニオンギアの一部が茶色くなって錆びてるように見えますが、これは黒いメッキが剥げて地金が見えているため。
ワッシャーを通したピニオンギアをケース(本体)に通します。
ウォームホイールをウォームギアと噛み合うように組み込みます。ウォームホイールには向き(裏表)がありますので注意。
ペグシャフト(軸)を差し込みます。シャフトがウォームホイールの穴に嵌まるようにしてください。ウォームホイールの裏表を間違えてると嵌まらずに空回りします。
ネジを締めて固定します。回転する部分ですのでしっかり締めないといつか緩んでしまうかもしれません。
この段階でグリスアップします。
少量を絞り出して爪楊枝の先に乗せて塗布していきます。100円ショップの化粧品コーナーで売ってるシリンジ(注射ポンプ)を使ってもいいかもしれません。
グリースをどれくらい塗るかは適当に加減してください。
ここまでの作業をしてみて
「もうこんな面倒なことは2度としたくない!」と思うのであれば2度としなくて済むように多めに塗っておいてください。
「この程度の作業ならいつでもOK」というのであれば少なめでも大丈夫でしょう。
このグリスが切れた状態で負荷がかかるとギアが摩耗します。このペグのギアも摩耗してますね。
グリスが切れるといってもこの手の種類のペグの場合シールドされていますから、クラシックギターのオープンペグのようにグリスが無くなったりするわけではなくて、油分が酸化したり粘度が変化したりと経年による様々な劣化によって本来の性能を発揮しなくなった状態がグリス切れということになります。
グリスを塗り終わったらケースに蓋をして、ワッシャーを通してからツマミ(ボタン)をネジ止めすれば作業完了です。
ワッシャーは新品に代えようかと思いましたが再利用することにしました。
一連の作業を6個分やってみましたが・・・
やっぱダメだな、このペグ。
まぁ作業の途中で結論は出ていたんです。というかバラしてる途中で薄々気付いてました。
弦は巻けるでしょう。チューニングも合うでしょう。
でも恐らく頻繁にチューニングが狂うでしょうし、狂う度にこのペグに触れてガッカリし続けるんでしょう。
それは精神衛生上良くないです。
安いギターは好きです。安いパーツも好きです。
ですが弾いていてイライラするような要素は極力無くしたいです。
というわけで代用となるペグを探してみたいと思います。ゴールドじゃなくてもいいのかな。くすんだりするとメンテ大変だし。
2020/07/27 追記
ロトマチックペグの分解ですが、どんなペグでも出来るわけではないです。
最大にして唯一の難関である「蓋外し」、これが出来れば分解可能、出来なければ分解不可です。
経験から言わせていただくと精巧に作られたものは外しやすいです。寸分の狂いもなく作られていると「ピッタリはまっているだけ」の状態なので力の入れ方を間違わなければすんなり外れます。
逆に精度が粗いものは「無理矢理はめ込んでいる」状態なので無理矢理外さないといけません。
ですが無理矢理外そうとして外れるものでもないんです。
なので安ギターに付いてくる安いペグ、私はあれを分解してメンテしようとは思いませんし、したくても出来ません。分解を試みるのは今回のようにGOTOHやGOTOHの準ずる精度で出来たペグだけ。
蓋を外す方法をネットで検索すると「先の尖ったものを差し込んで外す」なんて記載がありますが、あれはどうなんでしょう?少なくとも私の手持ちの工具や道具で蓋の隙間に差し込めるものはありません。というか隙間なんてないに等しいよね。
私が購入する中古のペグは状態が悪いものが多いのですが、そうして購入した中古ペグの中には蓋を無理矢理外そうとしたのか傷だらけのものがたくさんあります。中には蓋が凹んでいたり内側に曲がっていたり。
ペグの蓋を外す手段は検索すればいくつか見つかります。見つかった手段の中からペグに傷を付けない手段から試していって無理矢理外すのは最後の手段とすることをお勧めします。
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